昨今学校での課外活動、部活動のありかたが問題となっています。
文化庁調査 中高の吹奏楽部、土曜練習、約半数が5時間超(毎日新聞)
私は中学時代吹奏楽部に所属していた為その問題とされている長時間練習については身をもって体感しています。
ちなみにわが校は超絶弱小部でしたがコンクール直前ともなれば放課後に4~5時間みっちり練習する日もありました。
その間拘束される指導教師や送り迎えをする保護者の負担はいまならわかります。
運動部ならいざ知らずなぜ文化部でそのような長時間練習時間が必要なのでしょうか。
今後吹奏楽部への入部を検討している方や家族が吹奏楽部を希望している方にわかりやすく吹奏楽部の練習の実態をお伝えします。
- 運動が苦手だけど何か部活をしようと考えている
- 室内でできる部活動として検討している
- 楽器を演奏してみたい
中学入学と同時に様々な理由で吹奏楽部に興味を持たれる方がいます。
長時間練習怖いな、と敬遠することなくその一歩をふみ出してもらえるために。
経験者の私が吹奏楽部の練習の中身をわかりやすく解説いたします。
体育会系文化部=吹奏楽部
吹奏楽部とは主に管楽器を用いて合奏をする部活動です。
その中で室内楽を中心にコンクールや演奏会を行うのが吹奏楽
屋外や体育館などで動きながら演奏することをマーチングと呼びます。
別々の部活として分けている部や並行して行う学校もあります。
吹奏楽部で演奏する楽器とは
メインの管楽器は以下の通りです。
- トランペット
- トロンボーン
- ホルン
- ユーフォニアム
- チューバ
以上に上げた楽器は金管楽器とよばれます。
いわゆるラッパ。
楽器に唇を押し当てて空気を送り込み、唇の振動を利用して音を奏でます。
楽器の大きさや形状により音色や役割が異なり、メインのメロディーを担うことの多いトランペットを始めたいと考える初心者が多く競争になることもあります。
- フルート(ピッコロ)
- クラリネット
- サキソフォン
- オーボエ
木管楽器は唇の代わりに木製の板を振動させて音を出す楽器です。
フルートだけは横笛なので息を吹き込むことにより楽器自体を鳴らす仕組みとなっています。
金管楽器よりもボタンが多いのも特徴です。
こちらの人気はなんといってもフルート。
女の子に圧倒的人気のフルートですが席が少ない為競争になります。
続いてメジャーな楽器であるサキソフォン、サックスも人気です。
- スネアドラム(小太鼓)
- バスドラム(大太鼓)
- ティンパニ
- シンバル
- シュロフォン、ビブラフォン、マリンバ等
合奏には欠かせないパーカッションの部署は大抵の学校では希望者が少ない印象です。
管楽器の競争に負けた人、始めたはいいモノのなかなか音が出せない人などが打楽器になることが多いです。
かといって簡単なわけではなく、打楽器の出来次第でその楽団の力量がわかる部分が実はあるんですよ。
地味な印象だからはじめはやる気の無かった人も卒業するころにはすっかり魅了されている…なんていう人が多いのもパーカッション(打楽器)の特徴です。
吹奏楽部は体力勝負!?
さて皆さんは高校野球の甲子園大会をみたことがあるでしょうか。
地域の代表校が炎天下の甲子園球場でしのぎを削る伝統ある大会ですが、影の主役は応援団と音楽を奏でる吹奏楽(ブラスバンド)の演奏だといわれています。
ブラス=息を使って広い甲子園球場いっぱいに響き渡る音量を出す必要があります。
地元の保護者や支援者など即席の応援団が手拍子しやすいようにリズミカルな音楽を大音量で炎天下演奏することがどれだけ体力を消耗する行為かは未経験者でも想像できるでしょう。
試合はおおむね2時間前後。
攻撃中のみ演奏するので半分の時間としても演奏時間は1時間程度は見込みます。
では室内楽なら楽なのか、そんなことはありません。
1曲の演奏時間は3~10分。
大作だと30分以上続く曲もあります。
コンクールでは時間制限12分とし、その中で課題曲と自由曲を演奏します。
時間こそ短く室内は空調が効いていて体力が必要だとは到底考えられない、そんな人も多いと思います。
しかし実際楽器を吹くということは常に腹筋をし続けるような筋力を必要とします。
はじめて楽器に息を吹き込んだ人は必ず「息が吸い取られるような気がする」と口をそろえて言います。
体内の酸素を吸い取られて思わずめまいがするほどです。
そんな状態からスタートしてコンクールがあるのは夏ですから、入部して3か月後には12分間息を合わせた演奏をできるようになる必要があるわけです。
いったいどれほど練習すれば可能なのでしょうか。
個人差はありますが、放課後1時間じゃ全然足りないのです。
まずは準備運動?腹筋・腕立て・ランニング…
さて吹奏楽という種目が体力の必要なことだということはおわかりいただけたと思います。
問題は技術面より体力なのです。
このため吹奏楽の強豪校ともなれば集合はまずグラウンド。
服装は体操服となります。
まずはウォーミングアップとランニング、腹筋背筋などの筋トレで体を動かした後ようやく楽器の組み立てに入る。
運動部もあきれるほどのハードメニューを組んでいる学校もあると伝え聞きます。
もちろんこれは一部の強豪校だけではありますが、この光景をみた何も知らない人が
と批判したくなる気持ちもよくわかります。
実際体力づくりを批判する指導者も多くいますし、その効果よりも根性論で実施している場合も少なくないでしょう。
ですが一方で楽器を己の呼吸のみで演奏するということがそれなりに体力を要することであるということをご理解いただきたく思います。
吹奏楽の指導法とその難しさ
ここまで読んで「なんだ、吹奏楽って難しいな」と感じる方も多いと思います。
しかし安心してほしいのはみんなはじめは初心者だということです。
中学・高校の吹奏楽は入部して初めて楽器を触る子が多いです。
楽譜も読めない状態での入部者も少なくありません。
たとえば野球部ならばある「キャッチボールくらいは遊びでやった」とか「体を動かすのが得意だ」という動機での入部が多く、体を動かす運動の一つとして野球のやり方を指導することになります。
しかし音楽の事情はそう簡単には行きません。
音楽に触れてきた子と、そうでない子の意識とレベルの違いはかなり大きく、指導者も頭を悩ませるポイントとなっています。
無駄ともとれる長時間練習や過度な体力トレーニングが問題となってい久しいですが、そういった運動部ではない部活動の指導の難しさもその一因と言えるでしょう。
音楽とは作曲者のイメージを形にする作業
みなさんご存知ベートーヴェンの第九がはじめて演奏されたのは1824年のこと。
200年も前の楽譜をみて、200年前の音楽を現代に再生する作業が音楽の神髄です。
まるで歴史的名著を読むかの如く楽譜を読み込み音符や記号の意味、それを伝えてきた人々の歴史を読み解くことがクラッシック音楽の醍醐味です。
その入り口が吹奏楽になっているのだと私は考えます。
100年以上前の楽曲から近代のポップスまで幅広く演奏でき、誰でも始められるすばらしい部活動です。
弦楽器よりもとっつきやすく耳なじみのある楽器が管楽器ですが、一番大切なのは息のコントロール。
はじめはがむしゃらに音を出すために楽器に息をふきこむのですが、練習を重ねるごとにまるで体の一部のように感じることができます。
まるで歌うように楽器を演奏できたならこれほど心ふるえる体験は無いでしょう。
しかしその境地に至るまでには高い音楽知識や楽曲理解度が必要です。
楽譜を読むことに必死な初心者にそこまで求めるのは酷というもの。
昔は指揮台で怒鳴る指導者が問題となりましたが彼らに同情の余地があるとすれば、手っ取り早く感情をのせる方法をそれしか知らないからなのでしょう。
悲しい風景は悲しい気持ち、強い音は強い気持ちで吹かないと音は出せても音楽は伝わらないのです。
もちろん昨今は激昂する指導者はほぼ絶滅危惧種となっているらしく、時代にあわせた指導法が行き渡りつつあると感じます。
時に厳しい指導もあるでしょうが、私が出会った先生たちは厳しいことばのあとに必ず理由を説明してくれていました。
ここはどのようなイメージで演奏してほしいのか、40人全員に同じ情景を思い描いてほしい!
その思いを受け取れる指導方法ならば私は多少のスパルタも気にならなかったです。
指揮者の指導方法が進歩しても心と心のぶつかる芸術の世界ではある程度感情に訴える指導も時には必要なことなのです。
長時間吹き続けることでしか得られないもの
吹奏楽部の練習が長くなる根本的な理由は合奏の時間ではありません。
管楽器のメジャーな練習に「ロングトーン」というものがあります。
同じ音をひたすら長く伸ばす練習で、これにより肺活量を増やしたり演奏に必要な筋肉を鍛えます。
楽器を吹くための基礎体力をこのロングトーンで鍛えるのです。
管楽器は楽器をくわえる「くち」の形が最も重要です。
理想の形をキープするためには同じ音をひたすら伸ばし続けることが一番効果的で、けれどキツイ練習といえます。
こういった基礎練習は現状「1日10分」などコツコツ行うしかないのですが、理想を言えば毎日1時間やり続けて3か月後に変化を実感するようなものです。
しかも1日休んだらよくなった「感覚」を忘れて一気にスランプになることもあります。
こうした基礎練習はつらく全く楽しくない為人によってブラックだと感じるでしょう。
しかしどのような競技でも始めは地味な練習から始めて上達するものです。
基礎練習1時間、合奏1時間→帰宅。
当時の私は本当に時間が惜しくてもっと練習したいともどかしい気持ちでいました。
まとめ:本人のやりたいことをさせよう
結局は本人のやりたい気持ちがどこにあるのか。それに尽きます。
- 集団心理でやりたくもない練習を強要されている
- 楽器は好きだけどきつい練習方法が合わない
- 仲間内で仲良くやりたい
もしこういう吹奏楽部員を見つけたら、退部をお勧めしてあげてください。
室内楽の世界は意外と人間関係アレなこと多いので何がつらいかはケースバイケース。
ただ、これは私の経験なのですが…中学3年の春に母が亡くなり3か月後の中学最後のコンクールまでの毎日の練習が生きがいでした。
土日も毎日学校に行ったけれど、音楽に触れることができる毎日がこの上なく幸せでした。
口にできないもどかしい感情を音にできる感動
それを誰かにとどけるよろこび
全員で同じものを作り上げる難しさと達成感。
それを味合わせてくれた吹奏楽に感謝してもしきれないです。
もし同じように全身全霊で吹奏楽を楽しんでいる子たちがいたならば、この記事を届けてほしいです。
- 君たちがやっていることは間違いじゃない
- 必ず将来「やっててよかった」と思えるだろう
ちなみに私のコンクール成績は県予選銀賞でした。
参加賞の一つ上のがんばったで賞みたいな位置づけですが、それでも私たちは大喜びするような弱小校ですが、わたしは音楽をやっててよかったと思います。
意識も知識も目的も全く違う40人が1つの目標を達成するという得難い経験を、運動が苦手な私でも経験することができました。
この経験は社会に出てからもおおいに役立ち、音楽の知識はささやかに教養として身についております。
入部を検討中の方、ぜひこの楽しい音楽の体験を一緒にはじめてみませんか?